ビジネス参入のステップと未来予測
本コラムの前編では、国内外におけるリユース市場の動向とそのビジネスチャンスについて紹介してきました。これによりリユースビジネスの広がりと数多くの企業が参入を始める理由をご理解いただけたかと思います。
前編に引き続き、2024年10月2日~3日に開催された「Reuse×Tech Conference for 2025※1」で得られた最新情報にも触れながら、リユースビジネス参入の基本的なステップに焦点を当て、さらに今後の市場動向を考察することでビジネスモデルとしての可能性を探ります。
1. リユースビジネス参入に向けた基本ステップ
リユースビジネスを始めるためには数多くのステップを踏む必要があり、それぞれのステップにおいて、検討状況に応じたさまざまな課題が発生することが想定されます。
リユースに関するすべてをひとつの企業で完結させることは難しく、自社の特化すべきところを見つけつつ、ほかの企業と協業することが必要となります。
持続可能なビジネスを構築するために、ビジネスのゴールとそこに向けた計画を適切に設計し、運用していくことが重要です。
STEP1. 導入検討
一次流通事業者がリユースをビジネスとして開始するには、既存事業との連動と最大限の相乗効果を考慮した設計にする必要があります。
リユースは一次流通の価値を上げる施策にもなるため、回収後のインセンティブ設計や資源循環フローの構築がビジネスとして成功するかどうかの分岐点となります。
環境配慮という視点だけで事業を開始するのではなく、収益性を確保しながらビジネス化することがポイントとなります。
STEP2. 設計・開発・検証
企業が自社でリユースビジネスを始めるには、リソースが足りないために運用できないということが往々にして発生します。回収や修理、メンテナンスやリユース品の販売といったオペレーションには専門知識や技術を要するため、必要に応じて専門ベンダーへ作業を依頼することも重要な選択肢となります。
リユースという市場内には多くのプレーヤーが存在するため、一社が独占する形ではなく各社が協力し合うことが必要となってきます。
STEP3. 運用・管理
リユースビジネスを開始すると一次流通と二次流通が共存することになるため、商品の流通やデータの管理が複雑化してきます。
リユース事業者の多くは、いかに安く買い取り高く早く売るかを重要視するあまり、データマーケティングをできていないというのが実態です。従って、取り扱うデータを蓄積・分析できる環境を整えたうえでマーケティング・ブランディングの観点で活用していくことで、他社と差別化することが可能になります。
2. リユース市場を取り巻く今後の動き
① 各企業の動向
前編でもお伝えしたように、リユース市場規模は年々増加傾向にあり、今後も自社でリユース事業を開始する企業が増えていくと想定されます。
この市場の広がり方はECが日本に登場したときの流れに似ており、今後5~10年の間ですべてのブランド・メーカーや企業がリユースを実施するとも予想されています。
また日本の家庭に眠っている資源(かくれ資産)は66.7兆円に上ると推計され※2、これらを流通させることでさらなる拡大を図ることができるとされています。
このような市場環境下において、各企業が環境配慮と収益化を両立させることにより、リユースをビジネスとして展開していくスピードが加速していくことでしょう。
② 日本における法整備
欧州では、2024 年に採択されたエコデザイン規則(ESPR)において、未使用製品の廃棄禁止が規定されるなど、繊維製品の廃棄禁止が法制化されつつあります。日本でも大量生産、大量廃棄が深刻化している背景を受けて2024年6月に「環境配慮情報開示ガイドライン」※3が公表され、2030年度には国内市場における主要なアパレル企業において情報開示率を100%にすることをめざす としています。前編でも述べたように、廃棄をなくすためのアウトレットやセールは常態化してしまっているため、新たな選択肢としてリユースを取り入れることが一つの解決策にもなり得るのです。こういった動きは繊維業界に限らず、今後各業界においても同様に検討が進んでいくことが予想されます。
③ テクノロジーの発展
資源循環型産業(サーキュラーエコノミー)の実現に向けて、欧州では製品のライフサイクル全体にアクセスできる電子記録としてDPP(デジタルプロダクトパスポート)の導入を2026年より順次義務化していくことを決定しています。日本において具体的な導入時期などは公表されていませんが、内閣府SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)では日本版DPPの構築について早急に実現すべきであると述べています※4。
またリユース品の査定・買い取り・販売時に必要となる真贋判定や本人確認の分野におけるAI活用サービスも普及しており、これらの新しいテクノロジーが今後もリユース市場の拡大を後押ししていくことでしょう。
3. おわりに
本コラムでは、前後編にわたりリユース市場の動向や導入効果、導入におけるステップについて最新動向をもとにお伝えしてきました。
今後は各社がリユース事業を環境観点だけでなくビジネスとして立ち上げていくことが予想され、リユース市場はますます拡大していくことが見込まれます。
環境関連やリユースに関するご相談がございましたら、まずはぜひDNPコアライズにご連絡ください。
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