そのまま委託からの脱却。例外に強い仕組みはどう作られるのか
設計力のイメージ(フロー作成)

事務処理やデータ入力、コールセンターなど、さまざまなバックオフィス業務でBPO(業務外部委託)が活用されています。しかし、業務を依頼する企業(以下、委託元)からは、こんな声が上がります。

  • 「せっかく委託したのに、毎日『このイレギュラーはどう処理しますか?』とBPOベンダーからエスカレーション(確認依頼)が来て、結局従業員の負荷が減らない」
  • 「最初は順調だったが、繁忙期で業務量が倍になった途端、ミスが急増して運用現場が回らなくなった」
  • 「今の業務手順をそのまま委託したら、BPOベンダーの特定担当者に業務が依存してしまい、その人が休むと業務が止まるようになってしまった」

なぜこのような事態に陥るのでしょうか。BPOベンダーのオペレーターのスキル不足や、人員体制の問題だと考える方も多いかもしれません。これに対し、DNPコアライズで長年にわたり数々の大規模BPOプロジェクトの立ち上げを担ってきた瀬戸は、「本当の原因は、人員ではなくもっと手前の『設計』にある」と指摘します。

今回は、BPOを成功に導くための「設計力」とはなにか、BPO運用のリアルな実態を交えてひも解きます。

エスカレーションを「設計」で制御。例外処理のルール化が鍵となる

──BPOベンダーから「これどうしますか?」という確認が止まらないという声をよく聞きます。なぜ外部に任せているのに、委託元の手から業務が離れないのでしょうか。

瀬戸

典型的なのは、正常処理の流れだけが整っていて、例外処理が設計されていない状態です。

こうした状態は、今でも多くの運用現場で起きています。以前、他社から当社に切り替わった大規模案件でも、運用現場で判断が滞る状況が起きていました。その案件では、正常な申請は処理できていました。ただ、判断に迷う案件や基準に当てはめづらい申請が、エスカレーションとして積み上がっていたんです。

会議室の一角に積まれた段ボール箱を前に、営業や企画のメンバーが一人でいくつもの箱を抱え込み、個別に判断している。そんな状況でした。

正常案件はフローの中を流れていく一方、例外案件はフローに乗らず、人の判断待ちで止まっていました。その原因は、例外処理が設計されていなかったことです。

──しかし、例外をゼロにできない以上、こうした現場の停滞は仕方のないことなのでしょうか。

瀬戸

いいえ。設計によって運用現場で処理できる範囲に収めることは可能です。設計でまず大切なことは、どこまでをBPOベンダーの判断で完結させ、どのようなケースを委託元であるお客さまへ戻すか。その「境界線」をあらかじめ明確にすることだと考えています。

「そのまま委託」は属人化を拡大させる

──設計では「境界線」を明確にするのが大切ということはわかりました。ただ実際の運用現場では、その判断の部分でつまずくケースもあると思います。なぜ現場では判断が滞ってしまうのでしょうか。

瀬戸

最大の理由は、委託元の現状の業務手順(As-Is)を、そのまま移植して委託してしまっているからです。

もちろん、委託前に手順を完璧に整備するのは難しいものです。しかし、属人化してしまい、現状の業務手順を移植するだけでは見えてこない「暗黙知」をBPOベンダーが仕組み化するプロセスを飛ばして運用を始めてしまえば、属人化というリスクもそのまま引き継がれてしまいます。

結果として、判断基準が曖昧なまま、イレギュラー案件が「例外」としてフローの外に押し出され、すべて委託元へのエスカレーションとして跳ね返ってきます。

また、運用現場の手順書に「不備を確認する」とあっても、その解釈の「さじ加減」が属人化したままだと、BPOベンダーのオペレーターは責任が取れず、少しでも迷えばすべてを「念のため確認」として戻してしまいます。

──では、業務が止まらない運用現場にするためには、なにが必要なのでしょうか。

瀬戸

重要なのは、イレギュラーそのものをなくそうとするのではなく、なにをもって「不備」や「例外」とするかの定義をあらかじめ設計しておくことです。

私が新人の頃、運用現場で「不備の設計が一番大変で、一番肝なんだ」と口酸っぱく言われていました。これは今でも変わらず重要なポイントです。特に最近は、業務量の変動や短期間での立ち上げが求められるケースも増えており、属人的な判断に頼らない設計の重要性はより一層高まっています。

正常処理から外れるものを、すべて「例外」としてフローの外に出すのではなく、「こういう場合はこう処理する」「ここで差し戻す」といった対応を、あらかじめ決めておくのです。

「ライン型設計」で属人化を排除。
例外を仕組みで流すモノづくりの知見

瀬戸

ここで活きるのが、私たちが印刷を起点とする「モノづくり企業」であるという点です。私たちのBPOには、製造現場の知見を応用した「ライン型設計」があります。

小規模なら一人の担当者が全ての工程を完結させる「セル型」も小回りが利いて良いですが、業務の規模が拡大すると、個人のスキルに依存する属人化が問題になります。セル型でも「判断の分岐」は行われますが、それは担当者の「頭の中」で留まってしまいがちです。

これに対し、ライン型は工程を細かく分解し、複数名で分業しながら、分岐のルールそのものを「あらかじめ決められたルート」として外に切り出す構造です。

例外が発生してもあらかじめ決められたルートへ分岐させることで、特定の担当者に頼らない体制を構築しています。

セル型とライン型の違い(イメージ)


個人の能力を超えて組織で動かさなければならない「拡張局面」においてこそ、このライン型設計は真価を発揮するのです。特に複数拠点での運用や、短期間での立ち上げが求められる今のBPOでは、このようにフローと例外の扱い方をあらかじめ整理しておくことが、安定して運用するための前提になります。

「臨機応変」は危険信号。属人化リスクを見抜くポイント

──とはいえ、商談の段階で詳細な業務フローを確認するのは難しいですよね。お客さまは、何をもってBPOベンダーの設計力を判断すればよいのでしょうか。

瀬戸

おっしゃる通り、商談の段階で詳細な設計を見ることはできません。一方で、投げかけた「問い」への回答の具体性で、そのBPOベンダーの設計思想は透けて見えることがあります。
例えば「判断が分かれるようなイレギュラー案件は、どう対応しますか」と尋ねてみてください。

──もし、その答えが「経験豊富なリーダーがその都度判断し、臨機応変に対応します」というものだった場合、安心してもよいのでしょうか。

瀬戸

「ベテランのリーダーが臨機応変に対応します」という回答は、パッと聞いた瞬間、頼もしく聞こえるかもしれません。でも、実はそこに「属人化」のリスクが隠れています。「その人がいないと回らない」という状態は、裏を返せば、例外を処理するための「ルート」が設計されていない証拠でもあるんです。

本当の設計力があるなら、「例外をどう分類し、どのルートに振り分けるか」という構造の話が出てくるのではないでしょうか。個人のポテンシャルに頼らず、仕組みで解決しようとする姿勢があるか。そこが、大規模な拡張(スケールアップ)ができるかどうかの分かれ目になると思います。

BPOは単なる作業委託ではなく、業務を安定的に運用できる構造へ変える取組みです。その土台となるのが設計力だと考えています。

まとめ

今回の取材で見えてきたのは、「例外は存在するもの」という前提に立った設計の重要性です。
正常処理だけを整えても、例外が業務の流れの外に出れば、エスカレーションは減りません。

業務が安定するかどうかは、例外を分解してフローに組み込む事前準備にかかっています。規模が拡大し、処理件数が増えたとき、この設計力の差が運用現場のパフォーマンスとして明確に表れます。

重要なのは、例外をなくすことではなく、例外を業務の流れの中で処理できる状態にしておくことです。BPOの成否は「設計」で決まります。その視点でBPOベンダーを見極めることが重要になります。

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