予想外の業務急増にどう備えるか?
BPOの運用現場で磨かれた対応力と設計力
進化するBPO

「月曜の朝、受領数が予想の3倍に跳ね上がった──」

想定以上のキャンペーン成功やメディアでの露出による申し込み殺到で件数が急増したり、予期せぬ制度変更で新たな対応作業が発生したり。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の現場では、計画通りに進まない事態が日常茶飯事です。
「残業で乗り切る」「とにかく人を増やす」――そんな場当たり的な対応では、品質もコストも維持できません。では、どうすれば業務急増に耐えられる体制を作れるのでしょうか。
金融業界を中心にBPO設計・運用を担う部長の武田に、実際の対応事例を交えながら話を聞きました。

BPOの真価は、トラブルが起きた時にこそ現れます。
ここで柔軟な対応ができるか否かで、エンドユーザーの満足度、ひいてはその業務の成否が決まるのです。
キーワードは「数値で判断する」「エンドユーザー視点を貫く」
予測できない危機を乗り越える判断軸とその対応を、リアルな現場感とともにお届けします。

最も多いトラブルは「予測外の業務急増」

── BPOの運用現場でよく起こるトラブルはなんですか?

武田

やっぱり一番多いのは、「クライアントの想定を大きく上回る業務量が突然発生する」ケースですね。特に新しいキャンペーンや制度変更などが絡むと、ご担当者自身でも事前に正確な件数を予測するのはかなり難しいんです。3〜4倍ならまだ良い方で、10倍以上になることもありました。
例えば、オンライン本人確認(eKYC)への対応では、不正送金事件の発生に伴う行政指導によって、金融機関からの依頼が一気に殺到しました。審査項目も増え、想定を大幅に超える業務量になりました。

──業務の増加には、パターンがあるのでしょうか?

武田

大きく分けると、キャンペーンなどの影響による「一時的な急増」と、制度変更による「恒常的な増加」の2つがあります。一時的な急増で言えば、タレントを起用した口座開設キャンペーンの際に、若年層からの申し込みが集中し、処理件数が一気に増えたこともあります。一方、恒常的な増加は、先ほどお話しした金融機関の制度変更のように、業務量そのものが増加した状態が継続的に続くケースです。
いずれのケースでも、単なる人海戦術では限界があります。エンドユーザーの方々に安定したサービスを届け続けるためには、現場の生産性を高める設計や、処理フロー自体の見直しが不可欠なのです。エンドユーザー視点で考えると、例えば手続き完了までに何週間もかかってしまったり、問合わせへの回答が遅れたりすることが起きてしまう。そうした不利益を生まないためにも、私たちが体制面から支えることが重要だと考えています。

──業務急増が発生した際、初動で最も大切にしていることはなんですか?

武田

まず何よりも大切なのは、できるだけ早くクライアントと対話することです。
こちらからは、状況を可視化した数値データとともに、複数の対応案を提示します。想定納期、コスト、リスクなどメリット・デメリットを明示し、「エンドユーザーにとって最善の選択肢はどれか」をクライアントと共に判断していく 。この並走するような意思決定プロセスが、「DNPさんに任せてよかった」と言っていただける機会につながっています。

感覚ではなく、数値を根拠に現場を動かす

──その判断を支えるために、どのようなことを意識していますか?

武田

大切なのは、「感覚」ではなく「数値」で判断することです。

数値で判断、といっても、単純に受領数が3倍だから作業者も3倍増やそう......なんて考え方では失敗します。
作業者の処理能力は「作業習得期」と「熟練期」で全く異なります。教育が不足していれば管理者へのエスカレーションが増え、作業効率が落ちます。こうした要素を考慮して処理効率を試算しなければ、クライアントと対等に話せる根拠のあるデータにはならないのです。
また、受領数も曜日や時期によって大きく変動します。例えば、週末に手続きをされる方が多く週明けに処理が集中するケースや、月初・月末といった企業の処理タイミングで件数が増減するケースもあります。こうした波も数値で可視化して、最適な人員配置をする必要があるんです。

──さまざまな数値が必要となる中で、ツールなどの活用も進めているのですか?

武田

もちろん使っています。今はBIツールを主に活用していて、作業効率や曜日ごとの受領件数のムラなどを実績ベースで数値化しています。このデータを蓄積することで未来の予測もより立てやすくなりました。
クライアント予測値は実績値との差4.8%だったのに対して、昨年実績値や消費動向調査レポート等を用いた重回帰分析により、DNPの実績値との差は0.2%とほぼ的中し、ムダのない最適な体制を構築した事例もあります。これが数万件単位の案件になると、作業者の人数体制に影響を与えるため、この件数予測が非常に重要になっていきます。

  • BI(ビジネスインテリジェンス)ツール:企業が持つさまざまなデータを分析・可視化し、経営や業務に役立つ知見を得るためのソフトウエア。

──実際に数値判断が評価されたケースを教えてください。

武田

とある案件では、クライアントから「2週間後に件数が6万件から12万件へ倍増する」という緊急連絡をいただいたことがあります。 このままでは処理が遅延し、エンドユーザーの方々に大きな迷惑をかけてしまう──そう考えた私たちは、すぐに数値データにもとづいた体制設計に着手しました。作業員の習熟度別での作業効率、曜日ごとの受領件数の波、さらには教育期間を考慮した処理能力の試算。これらを総合的に分析し、加えて業務フローや審査プロセスの見直しも含めた最適な設計を組み上げることで、SLA内で処理しきることができました。
クライアントの担当役員の方からは、この数値にもとづいた迅速な対応を高く評価していただきました。

  • SLA(Service Level Agreement):サービス提供者と顧客の間で合意される、サービスの品質や応答時間などの水準を定めた契約。
会議をしている社員

本質的な改善提案が信頼を生む

―― 残業や単純な人員増員など「安易な手段に逃げない」姿勢は徹底されていますね。

武田

実際、残業で増やせる処理量は日中の処理量よりも大幅に落ちることが多いんです。残業による継続的な効果は期待できず、むしろ現場の負担や効率低下につながる危険性があります。それは結果としてエンドユーザーに不利益を与えてしまう。
だからこそ、場当たり的な対応に依存せず、処理の優先順位や業務特性を踏まえた、数値に基づいた「持続可能な体制」を設計することが重要なのです。
もちろん、短期間・計画的な対応が必要なときには、残業も"戦略的に"使います。例えば、「1週間だけ、毎日1〜2時間の延長をお願いする」といった形であれば、現場の納得感も得られますし、体制としても維持できます。

──ルール設計などにも踏み込むケースはあるのですか?

武田

あります。単純に業務を回すだけでなく、申請ルールや審査プロセスに対して「この部分を変えた方がよいのでは」といった提案もしています。
もちろん最終判断はクライアントですが、現場での実態を知っているからこそ言える視点があるんです。
「実際の作業でどこがボトルネックになっているか」を見極めた上で、「エンドユーザーの利便性を保つためにどのプロセスを厚くし、どのプロセスを薄くするか」と、業務そのものを見直す。私たちは人員体制の提案だけでなく、業務の構造にも踏み込んで提案できるという点で、クライアントから評価いただいています。

クライアントのパートナーとして、ともにエンドユーザーの方向を見る

──最後に、メッセージをお願いします。

武田

件数増加の緊急事態発生時に大切なのは、「その場しのぎ」で終わらせないことです。その場しのぎの対応は、次の急増時にまた同じ混乱を繰り返し、エンドユーザーに不便を強いてしまいます。

DNPコアライズが大切にしているのは、次の3つです。
• 数値データで現場を可視化する
• 体制とプロセスを構造から設計し直す
• エンドユーザー視点を持ち、クライアントと同じ目線で考える


私たちは単に「言われた通りにやる」だけの外注先ではありません。「本当の課題/ボトルネックはなにか?」「エンドユーザーは満足するか?」をともに問い直しながら、予測できない危機をも乗り越えられる体制を一緒に作り上げる――クライアントのパートナーとして伴走することを、何より大切にしています。

まとめ

BPOの真価は、トラブルが起きた時にこそ現れます。

武田が強調した「数値で判断する」「エンドユーザー視点を貫く」という考え方は、そうした非常時の現場でこそ支えになる考え方です。

業務量の急増や想定外の事態に直面した際、私たちは感覚に頼るのではなく、実績データをもとに状況を見極め、その先にいるエンドユーザーへの影響を常に意識しながら対応を重ねてきました。その結果、「人を増やすだけ」に終始しない、持続可能な運用体制を築くことができています。

コストだけを基準に委託先を選ぶと、いざトラブルが起きた時に柔軟な対応が得られず、結果としてエンドユーザーに不便を強いてしまうことも少なくありません。本当に大切なのは、危機の時こそパートナーとしてともに考え、動いてくれるかどうか、です。

こうした現場起点の改善を積み重ねてきた姿勢は、製造業として品質と製品の使われ方に徹底的に向き合ってきたDNPのモノづくり文化の中で、自然と培われてきたものでもあります。
目の前の業務を回すだけで終わらせない。その先にあるエンドユーザーの笑顔を見据えて、現場を磨き続ける。これこそが、私たちが誇るBPOサービスです。

センター見学のご案内

「運用体制の実態をご自身の目で」DNPの現場見学を現在開催中です!

DNPのBPOソリューションセンターでは、実際のBPO現場を公開する見学会を定期的に実施しています。
ぜひご自身の目でお確かめください!

お問合わせ

ご質問・ご相談については、以下からお気軽にお問合わせください。

合わせて読みたい