「一番の敵は“待ち時間”」
製造業の魂が息づく、BPO現場の終わりなきカイゼン活動とは
DNPコアライズ現場社員の集合写真

BPOサービスの裏側では、業務効率化や品質向上のため、日々どのような工夫が凝らされているのでしょうか。多くの企業が抱える業務課題を解決するヒントは、その最前線にありました。今回は、DNPコアライズでBPOの運用部門を統括する田中に、製造業の知見を活かした独自のカイゼンアプローチとその文化について詳しく伺いました。

コラムサマリ

データとツールで「待ち時間」を撲滅。
BPOの成果を最大化する現場のリアル

ー業務効率化というと、つい「個々の作業スピードを上げること」に目が行きがちですが、
現場のプロから見て、最も重要な課題は何だと思われますか?

田中

おっしゃる通り、個々の作業スピードを上げることは非常に大切です。私たちも、優秀なオペレーターの動きをビデオに撮って教育に活用したり、作業を簡易化するシステムを導入したりと、日々カイゼンを重ねています。

ですが、実はそれ以上に全体の効率へ大きなインパクトを与える"もっと大切なこと"があるんです。それが「待ち時間」ですね。ほんのわずかな待ち時間であっても、それが積み重なれば大きなロスになります。私は「待ち時間は百害あって一利なし」と考えています。
特に、お客さまから業務を引き継ぐ段階では、この「待ち時間」は見落とされがちな部分ですが、実際にはBPO全体の成果を大きく左右します。

この"目に見えにくいロス"を徹底的に洗い出し、プロセス自体を再設計していく―これをDNPは得意としています。単に業務を請け負うのではなく、委託元の業務そのものを効率化し、成果を最大化することがBPOの本質であると考えているからです。

工程と工程の間で何もしていない時間をいかに減らすかが業務効率化のカギであり、BPOの成果を最大化するための最重要ポイントと言えます。

ー「待ち時間」という課題に対して、具体的にどのようにアプローチされているのですか?

田中

最近ではBIツール※1を導入し、「誰が、どの業務を、どれくらいの効率で進めているか」といったデータをリアルタイムで可視化しています。これにより、ボトルネックや待ち時間がどこで発生しているのかを客観的に把握することができ、カイゼンの施策の精度が格段に上がりました。

さらに、試験的な取組みですが、各業務の作業量や人員スキルなどのパラメーターを入力すると、最適なリソース配分を導き出してくれるシミュレーターのようなツールの活用も始めています。これにより、リードタイムを40~50%短縮できた例もあります。

最新のテクノロジーを積極的に取り入れ、運用現場の判断を"経験や勘"だけに頼らずデータドリブンに変えることで、待ち時間の撲滅とBPO全体の最適化を加速しています。テクノロジー活用を前提とした運用カイゼンこそ、DNPがこだわり続けているアプローチです。

  • ※1
    BI(ビジネスインテリジェンス)ツール:企業が持つさまざまなデータを分析・可視化し、経営や業務に役立つ知見を得るためのソフトウエア。

全員参加でナレッジを共有。
カイゼンを加速させる組織文化の作り方

ー現場で生まれた優れたカイゼン事例は、どのように組織全体で共有されているのでしょうか?

田中

いくつか公式な場があります。各センターの課長クラスが毎朝集まるミーティングでの情報共有はもちろん、半期に2回ほど「現場報告会」という場を設けています。これは現場の担当者が主役となり、参加する社長や役員の前で、カイゼン事例を発表する会です。

さらに、全社員を対象にした「サービスナレッジプレゼン」という発表会を定期的に開催しており、優れたカイゼン事例を全社横断で共有しています。
こうした仕組みがあるからこそ、良い取組みは翌日には別センターで採用されることも珍しくありません。

現場報告を聞く経営層と他社員の様子
経営層へ報告を行う現場社員

ー仕組みだけでなく、それを支える文化的な背景もあるのでしょうか?

田中

「良い事例はすぐに取り入れるべきだ」という意識が、DNPグループ内全体に浸透していることが大きいですね。実際、役員から「あのセンターの事例、もう取り入れた?」と声をかけられることもあります。それくらい、経営層から現場まで一貫して"カイゼン"を重視する文化が根付いているということです。

管理者としては、「もちろんです!」と胸を張ってこたえられるように、日頃からアンテナを高く張り、良い取組みを自発的に共有し合う―その意味でのプレッシャーが、現場の自発的な情報共有を促すガソリンになっていると感じています 。

モノづくりのDNAが、品質と信頼の礎。
お客さまが「そこまでやるか」と驚く理由

ーDNPコアライズならではの強みは、どこにあるとお考えですか?

田中

やはり、DNPグループが長年培ってきた"モノづくり"のDNAが、現在のBPO現場にも強く息づいている点だと思います。具体的には、「お客さまと約束した納期は必ず守る」「品質を決して妥協しない」といった姿勢です。さらに、コアライズにはこれに加えて、BPO事業者ならではの"サービスマインド"があります。お客さまの視点に立って、どんな対応が最適かを考え抜く姿勢です。

「モノづくりのDNA」と「サービス業のマインド」の両方を備えていること―ここに、DNPコアライズならではの独自の強みがあると感じています。

ーそのマインドは、何か問題が起きた際の対応にも表れるのでしょうか?

田中

はい。大小に関わらず、現場では問題は起きます。例えば、急な仕様変更のご要望や、想定を超える処理件数の増加などです。 しかし、こういった場合でも、簡単にお客さまに「できません」とは言いません。通常の運用ラインとは別に、専門スキルを持ったメンバーを集めて「タスクフォース」のような特別チームを組み、短期集中で問題解決にあたります。

どうすれば影響を最小限に抑えつつ品質を担保できるか―何としてもやり遂げるという強い意志で、最後まで考え抜きます。

タスクフォースで打合せをする様子
タスクフォースメンバー

ー「モノづくりのマインド」は、ほかにどんなことに活きていますか?

田中

特にお客さまの情報を扱う上で、セキュリティを非常に重視している点に表れていますね。センター見学に来られたお客さまから「そこまで厳重にやっているんですね」と驚かれることもよくあります。

DNPでは、単に監視カメラを設置するといったハード面の対策だけを行っているわけではありません。日々の運用ルールを細かく定め、それを現場で愚直に積み上げ、徹底して守り続ける―この姿勢こそ、モノづくりの現場で培われたDNPならではのマインドだと感じています。カイゼンと同じように、セキュリティも"一度決めて終わり"ではなく、日々の積み重ねが品質をつくり上げていくと考えています。

ー運用面でのセキュリティとは、例えばどのようなことでしょうか?

田中

例えば、物理的な対策と運用ルールの両面からアプローチしています。物理的な面では、そもそも私物を持ち込めないように、オペレーターにはポケットのない制服を着用してもらっています。

その上で、入室時には私物などを「持っていない」ことを示すため、監視カメラに向かって手のひらを広げて見せる、というルールを設けています。重要なのは、これが単なる持ち物チェックではないということです。「私はルールを理解し、遵守します」と、入室のたびに本人が宣誓する。その意識付けを促すための行動なんです。

また、クレジットカード情報を扱う業務など、特に高いセキュリティが求められる場合には、国際的なセキュリティ基準である「PCIDSS」に準拠したエリアで運用を行うなど、お客さまの要件に応じて万全の体制を整えています。こうした取組みの裏側にある思想までご説明すると、多くのお客さまが感心してくださいます。

まとめ

最新ツールを駆使したデータドリブン運用と、製造業で磨かれた愚直なカイゼン文化。
この2つが組み合わさることで、DNPコアライズは他社には真似できない"終わりなきカイゼン"を実現しています。

私たちがめざすのは、単なる効率化ではありません。お客さまのビジネスを止めず、成長スピードを上げるパートナーであることです。
「そこまでやるのかDNP」―そう言われる理由が、この現場にはあります。

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