
1.現場で感じる「なんとかしたい」という声
「ベテラン担当者が退職したら、業務が回らなくなるのでは・・・」
「同じ業務なのに部署ごとにやり方がバラバラで、ミスや手戻りが多発・・・」
「マニュアルはあるのに、実務と合っていない・・・」
金融・保険業界の事務部門で、こんな悩みを抱えていませんか?
近年、法規制やコンプライアンス対応の強化、デジタル化の波、そして人材不足や働き方改革といった変化のなか、現場が抱える課題は複雑化しています。リモートワークへの対応が求められる一方で、紙の書類を中心としたアナログ業務や属人的な業務が残っているというギャップに、多くの企業が直面しているのが現状です。
こうした課題には、業務プロセス改革(BPR:Business Process Re-engineering)による抜本的な業務プロセスの見直しが有効です。BPRは、現状の業務プロセスを根本から見直し、組織やシステムを含めた全体最適を実現する確実なアプローチです。
ただし、「大規模な見直しは負担が大きそう」「現場の反発が心配」という声も多く耳にします。
2.その声の正体 ―現場の声から見える課題の連鎖―

漠然とした不安や悩みの背景には、相互に関連する具体的な課題が隠れています。私たちがこれまで支援してきた金融・保険業界の事務部門の事例から、以下のような5つの課題が連鎖的に発生していることが分かりました。
【悩みの陰に潜む主な課題】
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基盤の問題:マニュアルやルールの整備不足
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組織の分断:縦割り組織による業務効率の低下
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システムと現場の乖離(かいり):業務フローの最適化不足
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結果として深刻化する業務の属人化
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改善を妨げる現場と経営層との認識のギャップ
【課題の詳細】
多くの現場で最初に見られるのが、マニュアルやルールの整備不足です。内容が不明確であったり、実務と合っていなかったりすることで、特に新人や異動者にとって業務の全体像がつかみにくい状況を生んでいます。マニュアルが更新されず実務にそぐわなくなると、各部署が独自に解釈して運用するようになります。
このような独自の進め方は組織の分断につながります。具体的には、ある保険関連団体では、部署別の意識が強く、同じ業務でも拠点や担当者によってやり方が異なっていました。その結果、ムダな作業が発生したり、手順の違いによるミスが起きやすくなったりと、業務効率が著しく低下していました。
さらに、現場の実態に合わないシステムや手順は、担当者が手作業で対応せざるを得ない状況を生みます。ある信販会社の業務では、システムの最適化不足により、担当者は余分な作業を強いられ心理的な負担が生じる一方、生活者の方々にとっても申込手続きの煩雑さにより利用をあきらめてしまうなど、双方にマイナスの影響が出ていました。
これらの問題が重なることで、業務は特定の担当者に依存せざるを得なくなります。実際に、ある保険会社では、データベースの修正作業が特定のベテラン担当者に集中しがちな状況となっており、その担当者の異動や退職があった場合に業務が滞るリスクが懸念されていました。
そして最後に、こうした課題に対する改善を試みても、現場と経営層の認識の違いが壁となります。実際の問題や課題が経営層に正しく伝わらず、あるいは外部パートナーの提案が現場の実情に合わないため、効果的な改善が進まないという悪循環に陥ってしまいます。
このように、一見別々に見える課題も、実は密接に関連し合っています。そのため、個別の対症療法ではなく、包括的なアプローチが必要となってくるのです。
3.BPR推進の第一歩は「現状の可視化」

こうした課題を解決するためには、まず現場の声を丁寧に拾い上げ、組織全体で認識を共有することが不可欠です。BPRの第一歩は、「現状の可視化」にあります。しかし、この可視化のプロセスこそが、多くの組織が最初につまずく関門となっています。
例えば、「まず業務フローを作成しよう」というアプローチを試みたものの、各部署に対して業務フローの作成を依頼したところ、部署ごとの理解度や表現方法が異なり、全体像が見えづらくなってしまいます。さらに、出来上がったフローを見ても、どこから手をつければ効果的な改善につながるのか、具体的な次のアクションが見えてこない、という状況に陥りがちです。
私たちの経験では、効果的な業務の可視化には、以下のような工夫が重要と考えます。
全体像の把握
個別のマニュアルやフローを単につなぎ合わせるのではなく、実際のモノや情報の流れを確認し、組織全体としての業務の流れを理解します。
適切な粒度の設定
全体像を踏まえた上で、業務のつながりを重視した適切な粒度で可視化します。これにより、本質的な課題の発見につながります。
現場との対話
文書化された手順だけでなく、現場担当者への丁寧なヒアリングを通じて、暗黙知や運用でカバーしている部分まで可視化します。
このように、現場の業務フローや課題を適切に洗い出し、どこにムダや非効率があるのか、どこが属人化しているのかを明らかにすることで、初めて本質的な改善策を検討することができます。
4.はじめの一歩を踏み出すために
業務改革は、決して一朝一夕には実現できません。しかし、以下のような段階的なアプローチで、着実に進めていくことができます。
小さな範囲から始める
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まずは部署内の1つの業務から着手
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現場の負担が少ない範囲を選択
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短期間で効果が見込める部分から着手
現場の協力を得る
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丁寧な対話を心がける
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現場の意見を積極的に取り入れる
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現場の負担を増やさない進め方を検討する
実現可能な目標を設定
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段階的な改善計画を立てる
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無理のないスケジュールで進める
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小さな成功体験を重ねる
私たちDNPは、金融・保険業界の事務部門における業務改善の専門家として、多くの現場で「最初の一歩」をサポートしてきました。
5.まずは気軽にご相談を
「どこから始めればいいのかわからない」
「現場からの反発が心配」
「本当に効果が出るのか不安」
そんな疑問や不安をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。
経験豊富なコンサルタントが、貴社の状況に合わせた具体的なアプローチをご提案いたします。
下記の問合わせフォームから、どんな小さな疑問でもお待ちしています。
次回の後編では、業務改革を成功に導くための深い業務理解の重要性と、持続可能な改革の実現に向けたポイントについてご紹介します。
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2025年7月時点での内容です。