精度の高さから、これまで手作業で行われてきた紙書類の読み取り業務を効率化する手法として注目されているAI-OCR。しかしながら、単にAI-OCRを導入しただけでは、その効果を最大限に引き出すのは困難です。
AI-OCRの導入効果を高めるためには、導入に合わせて業務プロセスを再検討する必要があります。プロセスを見直すことで、紙書類の読み取りだけではなく、関連する業務の効率化も実現できるでしょう。
このコラムは、業務効率化につながるAI-OCR製品の選び方について解説します。
1.AI-OCRの概要
AI-OCRとは
AI-OCRとは、文字読み取り技術であるOCR(※)を、AI技術を活用して精度を改善したものです。
従来のOCR製品では、読み取り可能な紙書類は定型的なものなど範囲が限定されており、ビジネスにおいては限られた領域で利用されていました。AI技術により読み取り精度が向上したAI-OCRは、紙に印刷された文字のみならず、手書き文字や非定型の文章なども読み取り可能です。そのため、例えば手書きの契約書の読み取りなど幅広いシーンや分野で活用できる技術として注目されています。
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※OCR:Optical Character Recognition/Readerの略称であり、手書き文字や印刷された文字をコンピューターで読み取る技術のこと。
AI-OCRのメリット
AI-OCRを導入することで、従来は紙に書かれた文字を見ながら手作業で行っていた入力業務を削減できます。また、紙書類のデジタル化の精度が上がり、従来では実現が難しかったデータの共有や活用にもつながります。近年ではテレワークが一般化しましたが、オフィスに保管されている紙書類はリモートで参照することができません。AI-OCR導入により紙書類のデータ化の精度が上がれば、リモートでのデータ参照はもちろん、データの検索や集計、グラフ化なども容易に行えるようになるでしょう。
2.業務効率化につながるAI-OCRの選び方
AI-OCRは紙の情報をデジタル化できる強力なツールではあるものの、ただ導入するだけでは十分な業務改善効果は得られません。AI-OCRの導入効果を最大化するためには、適切なAI-OCR製品の選定と、業務プロセスの設計が重要です。
以下では、業務改善につながるAI-OCRの選定ポイントについて解説します。
読み取り精度
当然ながら、製品の読み取り精度は重要なポイントです。
AI-OCRは、AI技術の採用により、従来のOCRと比較して精度が大幅に向上してはいるものの、当然ながら製品によって精度に差はあります。そのため、できるだけ読み取り精度が高い製品の採用の検討が求められます。カタログスペックや評判などを参考にしつつ、各製品の精度面をチェックしましょう。
ただし、そもそもAI-OCRによる文字読み取りにおいて、100%の精度を出すことは不可能です。そこで、AI-OCRの導入においては、業務フローにチェック業務を含めることが必須となります。読み取り精度が高い製品を採用することで、AI-OCRによる読み取り結果のチェック業務の負荷軽減にもつながるでしょう。
RPAとの連携性
AI-OCRを選定する上では、RPAとの連動性を考慮することもポイントとなります。
RPAはAI-OCRと相性の良い製品として知られています。RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの略称であり、これまで人手で行ってきたPC処理などの自動化を実現します。
AI-OCRで読み取った紙書類は、そのままでは活用に向きません。データベースやシステムに格納したり、スプレッドシートなどで整理したりすることで、初めて利用しやすいものとなります。RPAを活用すれば、これらの処理を自動化できます。例えば、AI-OCRで読み取った契約申込情報を、RPAにより顧客管理システムへ自動登録するといった使い方も可能です。
人の介在を減らす機能の有無
AI-OCRの導入効果を最大化するために、できるだけ人の介在を減らす機能を持った製品を選択することも重要です。
AI-OCRは自動化による効率化ツールではありますが、業務プロセスを意識しないで導入すると、前処理などで思ったよりも人手が必要となり、結局効率化できなかったということにもなりかねません。
製品によっては、複数種類の紙書類を自動で仕分けして、読み取りを行うものもあります。例えば、申込書類に3種類のフォーマットが存在する場合、一般的にはAI-OCRで読み取る前に書類の分類が必要です。書類の件数によっては、人手でこれらの仕分けを行うことでさえ、膨大な作業量となってしまうでしょう。AI-OCRが自動でフォーマットの分類を行ってくれれば、3種類のフォーマットを手作業で仕分けすることなく、読み取りを開始できます。
このように、AI-OCRによる業務改善を行う際には、できるだけ人の介在を減らせる機能を備えた製品を選ぶことが重要です。
3.AI-OCRを起点とした業務改善の重要性
ここまで紹介した通り、単にAI-OCRを導入するのではなく、AI-OCRに関連する業務プロセスの改善の効果を意識した取組みが重要です。
よって、関連する業務全体の見直しをした上で、AI-OCRを導入する流れが望ましいといえます。このような取組みにおいて検討したいのが、BPR(Business Process Reengineering)の実施です。BPRとは、本来の業務目的を実現するために、現在の業務内容や業務プロセスを根本的に見直す取組みのことです。多くの日本企業では、これまでの慣習などが原因で業務プロセスが硬直化しており、効率や生産性の観点から最適な状態となっていません。収益の向上や顧客満足度の向上など、本来達成したい目的を実現するために、BPRにより業務プロセスを再設計します。
BPRで業務プロセスを設計した上で、それでも残る人手作業を解消する、という流れでAI-OCRの導入を検討してみることをおすすめします。
4.まとめ
このコラムでは、業務改善効果を得るために有効なAI-OCR製品の選定方法を解説しました。AI-OCRの導入目的は業務の効率化にあり、製品を選ぶ上で重要なポイントです。
加えて導入効果を最大化するためには、BPRによる業務プロセスの再設計も有効です。いくらAI-OCRで自動化しても、業務プロセスに不要な業務があれば、本質的な効果は得られません。BPRによる業務プロセスの再設計をふまえたAI-OCR製品の導入を検討すると良いでしょう。
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※2022年11月時点の内容です。