新しいサービス終了のかたち
システムの切り替えやサービス統廃合──その過程で発生する大量の顧客対応や告知・移行業務は、企業にとって避けて通れない重要なプロセスですが、終了業務における顧客接点(終了対応)は"ただ終わらせるための作業"になりがちです。
しかし、終了対応は、顧客が企業の姿勢を最も強く実感する"最後の接点"です。ここでの印象が、その後のブランドへの信頼や次のサービスへ移行しやすくなるかどうかに影響します。だからこそ、"終わらせるだけの作業"ではなく、"関係を再構築する機会"として設計することが重要です。
こうした局面を支援するために、DNPコアライズでは「サービス終了」をテーマとした業務支援サービス、「サービスクロージングBPO」を提案しています。単にサービスを"終わらせる"ための仕組みではなく、"次のステップにつなげる"ための設計と運用体制を備えた、新しいBPO(Business Process Outsourcing:業務プロセスの外部委託)サービスです。
本記事では、2025年10月8日〜10日に開催された「DNP THE SESSION 2025 AUTUMN」のプログラムのひとつであるセミナーの内容をもとに、サービス終了・移行時に必要となる一連の運用支援業務──告知設計、通知の送付、問合わせ対応、返送物の管理、移行手続きのフォロー──を取り上げ、「サービスクロージングBPO」の設計と運用のポイントを紹介します。
1. なぜ「サービス終了時の告知」が重要なのか
DNPコアライズが考える「ブランド転換点としての終了業務」
当社では、サービスやシステムの終了・切り替えに伴う告知・移行業務を、"終わらせる"ことを目的とするのではなく、"顧客との関係を新たな形でつなぐタイミング"と捉えています。
近年、金融機関をはじめ多くの企業で、紙通知から電子通知への移行、複数部署・ベンダー連携による調整業務の増加や運用設計の複雑化、個人情報保護・セキュリティ基準の高度化など、告知・移行業務を取り巻く環境が大きく変化しています。
こうした環境下では、誰に・いつ・なにを・どう伝えるかといった告知設計に加え、DMや電話、Webなど複数の顧客接点の運用、顧客から返送される書類の受領(じゅりょう)やデータ登録などの事務処理を、正確かつ同時並行で進める必要があります。これらが適切に機能しないと、通知漏れや遅延が発生し、問合わせの急増や顧客との信頼が揺らぐ恐れがあります。
そのため、終了業務では、複数の通知・事務処理を丁寧に連携させ、迷いや手戻りを防ぐ"運用設計"が求められます。
適切に設計されていると、顧客は「自分に必要な情報が正しいタイミングで届く」という安心感を得られ、それが「企業が最後まで誠実に対応してくれた」という印象へと変わります。この信頼が、結果として次のサービスへの移行率向上やブランドロイヤルティの維持につながります。
そこで本セミナーでは、「告知を"終わらせる作業"ではなく、"次のステップにつなげる仕組み"として設計・運用することの重要性」が共有されました。
2. DNPコアライズによるBPO支援のポイント
「終わらせる」ではなく「次につなげる」ための仕組みづくり
こうした状況を改善するため、当社では「サービスクロージングBPO」を提案しています。これは、サービス終了・移行時の告知対応を設計から運用まで一貫して支援し、終了を"次の信頼"につなげる仕組みです。
→ サービスクロージングBPOの詳細はこちら
重視しているのは次の3点です。
1. 告知・移行プロセスの最適な設計
2. プリント/バックオフィス/コンタクトを含むワンストップ体制
3. 金融機関レベルの高いセキュリティと実績
セミナーでは、これら3つのポイントそれぞれを象徴する事例を紹介しました。本記事では、その中でも「1. 告知・移行プロセスの最適な設計」を体現する代表的な取り組みとして、DMとAI自動応答サービスを組み合わせた事例をご紹介します。
今回紹介した事例は、金融業界の中でも顧客数が多い大規模企業での取り組みです。大量の顧客に確実に情報を届ける必要があり、加えて通知業務と問合わせ対応を効率的に連動させる仕組みが求められていました。また、案内品質の低下はクレームにつながりやすいため、負荷と品質の両立も重要でした。個々の業務をそれぞれ切り離して見るのではなく、プロセス全体を通して設計し、運用全体を一体的に管理できる体制が必要とされていました。
これに対して、複数ベンダー間で分断しがちな通知物の発送・コール対応・データ処理を一体化し、情報の受け渡しをDNP内部で完結できることで、管理負荷を抑えつつ、抜け漏れの少ない、安全でスムーズな告知運用を可能にしました。
実際、DMとAI自動応答サービスを組み合わせた運用では、コストを約70%削減しながらクレームゼロを達成。DM発送後の案内と結果のデータ化までを一貫して取り扱った結果、手続き完了率も高い水準となりました。
通常、AI自動応答サービスの導入はコスト削減には有効である一方で、「機械的で冷たい印象を与えるのでは」と懸念されがちです。今回の事例では、顧客が状況に応じて必要な情報を適切に受け取れるようシナリオを構成し、つまずきやすいポイントをなくす設計により、クレームなく運用できたと考えています。
ワンストップ体制は企業側の効率化にとどまらず、"顧客体験の連続性"を裏側で支える仕組みでもあります。通知を受け取り、問合わせ、手続きを完了する一連の流れを途切れさせないことで、顧客は「最後までスムーズだった」「任せて良かった」という感情を持ちます。これがまさに"次の信頼"を生む設計思想です。
設計から運用までを一体化し、顧客体験を起点にプロセスを整えたことが、コスト削減と同時に「体験価値の再設計」にも寄与しました。
3. セミナー参加者の声
ご参加いただいたお客さまからは、「サービス終了時の通知について、丁寧な対応や次のサービスへのつながりを意識することが大切だと感じた。BPOやコールセンターの活用も有効だと思う」という声が寄せられました。セミナーを通じて、告知業務を"ただ終わらせる"のではなく、見直す契機になった様子がうかがえました。
セミナーに加えて、会期中に設けた出展ブースでは、終了業務への関心が高まっていました。アンケートでは、回答者の約80%が「サービス終了業務を担当した経験がある」と回答。一部の回答者からは「Web上での告知のみで完結している」という声もあり、提案した"顧客に合わせた告知設計"の考え方に対して、興味や共感を示す反応が見られました。
終了対応を単なる業務完了ではなく、顧客体験の一部として設計するという視点への関心も確認できました。
4. 「サービスの終了」を次の価値につなげる
サービス終了・移行のプロセスでは、通知や手続きが円滑に進むことで、顧客が不安を抱かずに次のサービスへ移行できます。セミナーで紹介された事例でも、告知から問合わせ対応、データ処理までを一貫して管理することで、手続きの滞りや手戻りの発生が減り、スムーズな移行につながったことが示されました。
DNPコアライズは、プリント・バックオフィス・コンタクトを連携させたワンストップ体制により、終了・移行プロセス全体を安全かつ確実に運用できる環境を整えています。
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2025年11月末時点での内容です。